教師のその言葉かけ、大丈夫?///第7回「なんでできないの!?」

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日本標準

子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。

この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。

局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。

ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。

1.「なんで(どうして)できないの!?」

授業中、学習の復習や確認をしている場面でよく聞く言葉です。

かけ算九九を覚えられなかったり、分度器やコンパスを使いこなせなかったりする子どもに対して「なんでできないの!」と一言。

逆上がりや後転になかなか挑戦できなかったり、リコーダーのドの音がきれいに出せなかったりした時に「なんでできないの!」と一言。

宿題をたっぷりだしても、何回練習させてもうまくいかない時にため息とともに出てしまいます。

「なんで(どうして)できないの!?」と。

 

2.問題の所在

この言葉が出てしまう要因は、次のようなものがあります。その多くは先生側の心のもちようです。

 

  1. 子どもは1回教えたらできるようになるものと思い込んでいる、もしくは、早くできるようになってほしいという先生の焦りから生まれるもの。
  2. 他の子どもとの比較によって、できない子どもに対して言ってしまうもの。
  3. 先生の熱意の形(叱咤激励)として出てしまうもの。

 

子どもの側から考えてみると「なんで(どうして)できないの!?」と言われても、できない理由が分かれば困っていないのです。

できなくて困っているのは子どもの側だということを心得ておきましょう。

 

3.こんな指導をしてみましょう

「なんでできないの!?」というNGワードを言ってしまいそうなときは、次のようなポジティブワードを意識して子どもを観てみましょう。

 

01.何か困っていることはないかな

子どもは1回でできるようになる子どももいれば、何回も練習してやっとできるようになる子どももいます。

子どもによって定着の度合いは違います。子どもは1回話したくらいではできるようになりません。

もしも1回でできるようになるのであれば、それは子どもの側に学習ができるための十分な蓄積(レディネス)があったはずです。

できない子どもには、「何かこまっている所はない?」などと子どもに問いかけてみることも有効です。

 

02.もうすぐできるようになるよ

できない子どもの方こそ、他の子どもと比べてできないことに対して負い目に感じています。

先生の「なんでできないの!」という言葉かけは、その子どもの自尊感情を傷つけるものになってしまいます。

ですから、できない子どもに対しては「もうすぐできるようになるよ」「今、いい感じにできているよ」という言葉かけで、見える結果を求めるのではなく、そこに至る過程について励ましていきましょう。

 

03. 大丈夫、大丈夫!その調子!

先生の指導の熱心さのあまり「なんでできないんだ!」「もっと頑張れ!」といった言葉をかけてしまうこともあるでしょう。

ここには子どもとの関係性が関わってきます。

厳しい言葉をかけられても大丈夫なくらい先生とのきずながあればいいのですが、厳しい言葉に対して免疫のない子どもも最近は多くいます。

ちょっと厳しい言葉をかけられただけでも委縮してしまう子どももいます。

何度失敗しても、できなくても、「大丈夫、大丈夫!」「次はきっとできるようになるよ」とできない理由を教えてあげる方が、先生との関係も良好になっていくはずです。

 

4.目指す子どもの姿

そもそも先生の仕事とは指導し、できるようにすることです。

指導の方法はいろいろありますが、目の前の子どもを「できるようにすること」が私たちの仕事です。

ですから「なんで、できないの?」と子どもに言う前に、「どうやったらできるようになるかな」と自問自答することが先生の本来あるべき姿です。

その方法は、多くの本や研修・講座で紹介されています。ただ、全ての子どもが本や研修・講座で聞いたことがそのまま使えるとは限りません。

子どもは一人一人違い、その子ども固有の課題があります。先生がその子どものつまづきを見極め、その子どものための指導をしていくことこそ大切です。

子どもはできるようになることが増えていくと、自分から能動的に動くようになっていきます。そんな姿を目指しながら、先生も共に成長していきましょう。

 

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