遊びから広がる!特別支援教室のボードゲーム【第4回】個別の学びにボードゲームを活かす工夫

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日本標準

特別支援教室では、子ども一人ひとりの特性に合わせた学びの工夫が大切です。

ボードゲームは、その遊びの楽しさを通じて多様な学びを自然に育むことができる教材ですが、教材の選定や言葉かけ、役割設定などの工夫が重要です。

この連載では、授業で活用するボードゲームの紹介だけでなく、教員の工夫や実践のポイント、記事を書きながら大切だと感じた「気づき」もあわせてお伝えしていきます。

1.ボードゲームを個別の課題でも使うの?

ボードゲームは、小集団活動だけでなく、教員と子どもの2人で行う個別の課題としてもよく取り入れられます。
記憶力や言語力、思考力など、子どもによって大きな差が出やすい力がそのままプレイに表れるからです。
小集団での活動では、どうしても力の差が結果に表れ、何度挑戦しても勝てない場面が生まれることがあります。
そうした経験が重なると、授業でも「どうせできない」という気持ちが強くなり、学習に前向きになれない子も少なくありません。

例えば、漢字の覚え方を直接的に教えようとしてもなかなか定着しない児童に、特別支援教室でも通常の学級と同じ学習を行うと、かえって自信を失ってしまう場合もあります。
しかし、ボードゲームを通して「苦手への向き合い方」や「工夫の仕方」を身に付けると、気付かないうちに苦手が少しずつ得意へと変わっていくことがあります。

ボードゲームは、個別に取り組む教材として非常に優れています。
なぜ勝てなかったのかが具体的に分かるため、記憶・言語・思考などの力を一つずつ丁寧に高めることができます。
成功体験を積み重ねることで、自信にもつながります。
そして何より、得意な部分が見えると子どもは自信を持ちやすくなり、苦手な部分が見えると「次はこうしてみよう」と前向きに挑戦できるようになります。

私が特別支援教室で働き始めた頃、子どもたちから教えてもらったのが、今回紹介する「マンカラカラハ」でした。
最初は何をしているのか分からなかった私に、子どもたちがルールやポイントを一生懸命説明してくれたことが、今でも印象に残っています。
そんな思い出のあるボードゲームについて、改めて考えてみたいと思います。

2.教材(ボードゲーム)の概要 ※実際の商品説明とは異なる場合があります。

基本情報

名称:マンカラ・カラハ 【発売元 幻冬舎】
著者:日本レクリエーション協会(監修)
人数:2人(マンカラ・カラハファミリーは2~4人)
時間:約10分
対象:低学年~高学年・中学生
商品ページ:https://www.gentosha-edu.co.jp/smp/book/b617175.html

ゲームの世界観

アフリカをはじめ世界中で古くから遊ばれている伝統的なボードゲームの一種です。
シンプルなルールながら高度な戦略性が魅力で、初心者から上級者まで幅広く楽しめます。

相手の動きを予測しつつ、自陣を守る駆け引きが重要で、様々な力が自然と養われます。
ゲームの展開は変化に富み、飽きにくいのも特徴です。
また、世界各地で様々なルールやバリエーションが存在し、地域ごとの文化や遊び方を楽しむこともできます。
4色のきらきらした石が使われていて、子どもたちは興味をもちやすいです。

ルール(マンカラ・ベーシック)

マンカラカラハには、マンカラとカラハの2つの遊び方があります。本記事では「マンカラ」について説明していきます。

  • 全てのポケットに石を4個ずつ置く
  • 自分のポケットを1つ選んで、入っている石を全て取り、右隣のポケットから反時計回りに1個ずつ置いていく
  • 最後の石がゴールで置き終わったらもう一度自分の番、ポケットで置き終わったら相手の番
  • 順番に繰り返し、先に自分の全てのポケットから石をなくした人の勝ち


3.学びの要素

日本ボードゲーム教育協会の研究(引用:https://sites.google.com/view/jbgea/report?authuser=0)を参考にしています。
このゲームから得られる学びの要素と育つ場面をまとめました。

戦略思考:相手の動きも考慮しながら勝利につながる流れを作る場面
逆算思考:最終的な得点を見据え、そこから今の手を逆算して決める場面
論理演算:石の数や配置の変化を正確に数え、計算しながら動かす場面
大局観:自分と相手の盤面全体を俯瞰して有利・不利を判断する場面
情報処理力:石の動きや残数、相手の手の変化など多くの情報を整理し判断する場面
判断力:複数の候補手から最善の手を瞬時に選び実行する場面
レジリエンス:思い通りにいかなくてもあきらめず粘り強く続ける場面

4.こんな子におすすめ&実践のポイント

相手の動きに気づきにくい子



マンカラカラハは、学童クラブや放課後デイサービスなどで遊んだ経験のある子が多いゲームです。
「ぼくできるよ!」と自信満々で始める子も多いのですが、実際に取り組んでみると、あっさりと負けてしまう場面がよく見られます。
そうした子どもたちに共通する特徴として、「自分の石をなくすこと」を最優先にしている点が挙げられます。

マンカラカラハに限らず、対戦形式のゲームでは、相手を意識することが勝つための大きなポイントになります。
しかし、自分の石を減らすことに集中するあまり、相手がクリア目前なのか、次にどんな動きをしようとしているのかに目が向いていないことが少なくありません。
そこで大切になるのが、「自分中心の視点」から、少しずつ「相手の視点」へと気付かせていくことです。

「相手を見なさい」と強く指示するのではなく、興味を引くような問いかけを通して、相手の動きがどう変わったのかを一緒に確認する姿勢を心がけます。
私がよく使う言葉かけは、「もうすぐクリアできそう。ここに置かれたら嫌だなぁ」「よし、〇〇さんにこうやって攻撃しよう」と、心の声をあえて言葉にして伝える方法です。
子どもがその言葉に乗ってきたときには、「いやぁ~、やられた!」と大きく反応します。
すると子どもは、自然と相手を意識しながらゲームを進めるようになります。
勝つ方法をそのまま教えるのではなく、相手を意識することで勝ちにつながる視点を広げ、その変化が少しでも見られたら積極的に認めていくことが大切だと感じています。

先の見通しが甘い子 

マンカラカラハの勝敗は、主に終盤で決まります。
序盤は石の配置が均等なため大きな差はつきにくく、中盤で戦略が形づくられていくものの、形勢はまだ流動的です。
終盤になると、相手の陣地から多くの石を奪ったり、自分の陣地に石を残したりすることで得点が大きく動き、勝敗がはっきりと分かれます。

この終盤では、どのポケットの石から動かすかによって結果が左右されることがあります。
その際に重要になるのが、相手があと何手で終えるのかを予想する力です。
先を見通すことが苦手な子は、直感的に選んでしまい、結果として負けてしまうことがあります。

重要な局面では、私は「ここで勝敗が決まるかもしれないよ。」と声をかけます。
すると子どもは、石がどのように動くのかを一つひとつ予想しながら考えるようになり、最短で終わる手や有利になる手を探そうとします。
それでも考えることが難しい子には、「この石は最後、どこに置かれるかな。」「そのあと、相手はどう動きそうかな。」といった補助的な問いかけを行います。
短く具体的な問いを重ねることで、先の展開をイメージしやすくなります。急がせることなく、一歩ずつ見通す力を伸ばしていけるよう支援することが大切です。

数を数えることが苦手な子 

マンカラカラハでは、パッとポケットに入った石を見て数を確認して、プレイしていくことが求められます。
パッと見て石を数えることは意外とできないことが多いです。
学級担任をしていた頃から感じていましたが、数字と具体物の数が結びつかない子が少なからずいます。
学習障害的な原因もあるかもしれませんが、多くの場合、幼少期に物を数えるようなことをしてこなかった経験不足が原因であることを感じました。

マンカラカラハを通して、実際に石を見たり、触ったりすることで、操作して数える力や見て数える力が備わっていきます。
マンカラカラハで使われている石は透明で色に違いがあり、パッと見て数えやすくなっています。
実際に手で石を動かしながら、声に出して一緒に「いち、に、さん」と数えることで数の感覚を育みます。
また、途中で「あと何個あるかな?」と問いかけるなど、数える行為に関わる回数を増やす工夫が大切です。
間違えても否定せず、繰り返し関わることで「数えることは楽しい」「できる」という自信をつけられるよう支援しましょう。

5.気づき

遊びを通じて心をつかむアプローチ

マンカラカラハを始めるとき、石をポケットに四つずつ配ります。
こだわりの強い子は、あとで混ざってしまうと分かっていても、同じ色の石をきれいにそろえたがることがあります。
私はあえてそれを止めず、「これはソーダ味のグミね。じゃあ、コーラ味ちょうだい」などと、遊びに乗るようにしています。
通常の学級生活の中で、子どもたちはこうしたこだわりを我慢していることが多いためか、少しだけその世界に入り込むことで、安心感や満足感を得られるようです。

2回、3回と繰り返していくうちに、こうした行動は自然と減っていきます。
そのタイミングで「もうしなくなったね」と声をかけることで、気持ちを切り替えられたことを肯定的に受け止められるようにしています。

このようなかかわりを通して、子どもは安心して自分のペースでゲームに向き合えるようになります。
こだわりや自己表現を尊重しながら、少しずつ「みんなで遊ぶ楽しさ」や「ルールを守る大切さ」を学んでいきます。

夢中になれるからこそ育つ力

マンカラカラハには、「最後の石がゴールに入ると、もう一度自分の番になる」という特別なルールがあります。
ゴールに石を入れ続けることで、何度も手番を行うことができ、私はこれを「連続技」と呼んでいます。
連続技が決まったときの爽快感は格別で、子どもたちもこのルールが大好きです。

一方で、連続技ばかりを狙い、周囲が見えなくなってしまう子もいます。
連続技にこだわった結果、かえって負けてしまう場面も少なくありません。
そのようなときには、「今は何を優先したらよかったかな」「相手は次に何をしそうだったかな」と言葉をかけ、視点を広げるように促します。

実は、この連続技を成功させるためには、石の数を正確に読む力、先の展開を見通す力、そして相手の動きを予想する力が必要です。
複数の力を同時に使わなければ成立しないからこそ、連続技は高度なプレイだといえます。
そのため、連続技を狙い、実際に繰り出せた子どもについては、結果にかかわらず、その思考過程をしっかりと称賛するようにしています。

連続技に夢中になる姿は、「もっと上手になりたい」「考えることが楽しい」という気持ちの表れでもあります。
大人がその思いを受け止め、価値付けることで、子どもは安心して挑戦を続けることができます。
マンカラカラハは、勝ち負けを競うゲームであると同時に、「考えることそのもの」を楽しめる教材です。
連続技に挑戦する中で、子どもたちは試行錯誤を重ね、自分なりの戦い方を見つけていきます。
その積み重ねが、やがて学習や日常生活の中で必要となる「考え続ける力」へとつながっていくのだと感じています。

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