ウィーン・飛ぶ教室///第1回:コロナと学校

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日本標準

さて、今回から本格的にウィーンの様子についてお話をしようと思います。現在(2022年4月)は、ウクライナの戦争のことが毎日たくさん報道されています。しかし、今回は、世界がまだコロナ禍で右往左往していたころに時間を戻してみたいと思います。

 

グリーンパスがもらえない?!

わたしたちが2021年8月中旬にオーストリア入国した際には、すでに3Gルールという「ワクチン接種」(geimpft)、「コロナに感染したが治癒した」(genesen)、あるいはPCR検査や抗原検査の「陰性」(getestet)の証明書を、ホテルやレストラン、カフェなどで提示しなければならないルールが施行されていました。

オーストリアやヨーロッパで発行されたこれらの証明書は、すべてQRコード付きのもので、グリーンパスと呼ばれています。

3Gルールはその後大きく変更されますが、こうした情報を生活上で得るのもなかなか大変です。

例えば、日本から持参した接種証明にはこのQRコードがついておらず、ヨーロッパ仕様のものを獲得するのに、実に4か月以上もの時間を要しました。関係するすべて役所のHPを調べ、電話をかけ、在墺の日本人のブログを見たり、知人に聞いたりしても何もわからず、怒りに震えるやら、途方に暮れるやらしました。

大げさでなく、「移民」の暮らしの大変さを一部ですが、経験したと思っています。

こうしたコロナ禍のウィーンでじたばたと生活しながらも、子どもたちの学校と幼稚園が決まりました。子どもたちがどのようにしてコロナ禍で生活しているのかについてお話ししたいと思います。

 

ニンジャパス――無料の抗原検査とPCR検査

オーストリアの小学校(Volksschule)の始業時間は日本よりも早く、8時です(スーパーなどのお店の開店時間も日本よりも早め)。小学校は4年制です。2021年9月、新年度が始まったとき、小学生たちは、ワクチン接種の対象外でした。

なお、オーストリアでは、2021年11月中旬より5-11歳の子供たちのワクチン接種が始まりましたが、これについてはまた回を改めてお話しします。

学校では、抗原検査とPCR検査を実施しています。およそ次のような仕組みで子どもたちに検査を行っています。

 

月曜日:抗原検査(鼻)とPCR検査(うがい)

水曜日:PCR検査(うがい)

 

PCR検査は72時間有効、抗原検査は48時間有効となっています。週2度3回のテストで、月曜から金曜までは少なくとも陰性であることがこれで証明されるというわけです。

その結果は、ニンジャパスと呼ばれる蛇腹折にされた紙に、陰性であれば日付を記したうえでシールを貼ることで証明されます。1週間に貼られるシールは3枚です。

そして、厳密には水曜日に実施されたPCR検査結果は金曜まで有効であるものの、ニンジャパスを持参すれば、この結果が週末も有効であるとみなされます。

そしてまた月曜になれば、週末に感染しているかもしれないので、抗原検査(15分ほどで結果が出る)を行うという仕組みです。

これらのテストをする月曜日と水曜日の朝は、先生たちはとても忙しそうです。検査済みキットの回収が、8時半に来るからです。

教室では検査の工程を失敗してやり直しがあったり(うちの子どもも慣れるまでは何度かやり直しになったそうです)、ふざけて笑ったり、怒られたり、と多少騒然としますが、基本的には今はもう皆慣れたものです。

 

ニンジャパスがなぜ忍者のキャラクターを採用したのかはわかりません。このように1週間に3つのシールが貼られていると、レストランなどに入店することができます。

 

学校の出入り口や廊下、また月曜日の検査が済むまでの間は教室内においてもマスクを着用するように言われます。送迎する保護者で学校内に立ち入る場合には常に接種証明などを携帯し、FFP2マスクを着用しなければなりません。なお、保護者の立ち入りを原則的に禁止している学校もあります。

 

FFP2マスク

オーストリアでは、公共の場所ではこのFFP2マスクを着用しなければなりません。1枚およそ1ユーロ。安いときには60セント程度で売られていることもあります。

 

さて、月曜日の抗原検査で陰性となれば、子どもたちも教師もマスクを外します。休み時間に食べる軽食(Jause,ヤウゼという)も学童(Hort)で食べる昼食の間もおしゃべりを楽しむことができます。

ただし、感染状況が厳しい場合には、教室の中でもマスクを着用しなければならないことになっています。

給食の時間に黙食が徹底された日本とは対照的な対応であると言えます。なお、中等教育学校以降では、授業中もマスクの着用義務が課されました。また、5歳以下の子どもにはマスクの着用義務はありません。

こうした取り決めはすべて検査結果に基づいて、教育文化省の方針のもと、各州の教育相が決定しています。ただし、検査結果は完ぺきではありませんので、もちろん感染者が出たり、濃厚接触者になったりもします。

 

さて、話をニンジャパスに戻します。

このニンジャパスは、学校生活のためだけにあるのではありません。日常生活に対する証明書ともなっています。

例えば、このニンジャパスを忘れれば、その子どもは飲食店で飲食することができません(5歳以下は保護者に準じるということになっています)。

わたしたちがめずらしくレストランに行こうという時に、このニンジャパスを忘れたことがありました。

わたしはかなり強くレストランで交渉したのですが(というのも、それ以前には、大人の接種証明を求められることはあっても、子どもはほとんどフリーパスだったのです)、入ることができず、家まで取りに帰ったことがありました。

これはそのころ(2021年10月半ば)からコロナの患者数が増えつつあり、警察のコントロールが頻繁になってきたことと関係していたようでした。

レストランのスタッフはこういいました。

「昨日も警察が店に巡回に来たのです。その時には、レストランの出入り口を全て閉めて、だれも出られないようにしたうえで、全員の証明書を提示するように言われました。もしその時に証明書を提示できない客がいた場合、その客は500ユーロ、わたしたち店側は3000ユーロを支払わなければならないのです。ですから、わたしたちは残念ながらあなたの子どもを入店させるわけにはいかないのです」。

わたしは引き下がるしかありませんでした。と同時に、きちんとした店なのだなということもわかり、むしろ安心したことを覚えています。というのも、店によっては、証明書の提示を求めないところも多くあったからです。

さて、その時に、お店のスタッフにこうも言われました。「このすぐ近くに非常に安価に抗原検査をしてくれる薬局がありますよ」。場所を教えてもらったので、そちらにすぐ向いました。

しかし、その薬局はすでにその日の検査を締め切っており、薬剤師は「このすぐ近くに、テストコンテナがありますよ」といいました。そこでわたしたちはまたそのテストコンテナに向かいました。

その時、わたしは「テストコンテナ」なるものがどういうものかわからなかったのですが、行ってみると、その場所にはいわゆる「コンテナ」が道路に置かれており、そこでPCR検査や抗原検査が基本的に無料で行える場所でした。

 

テストコンテナ

通りに並ぶテストコンテナ

 

結局のところ、このコンテナでかかる待ち時間や検査時間を考えて、ニンジャパスを家まで取りに戻ったことは先述の通りです。

しかし、この時に、PCR検査や抗原検査が路上で、しかも無料で提供されていることに大変驚いたのでした。

これはウィーンに限ってのことらしいのですが、ウィーンに住む者は皆PCR検査を無料で受けることができます。わたしたちのような中・長期滞在者でも、旅行者でもです。

次回はそのことをお話ししましょう。

 

伊藤実歩子(立教大学文学部教授)

 

筆者注


なお、コロナの状況やそれに関する法案やルール、またあるいはウクライナを含む世界情勢については、日々情報が更新されます。この記事がアップされる頃には全く様子が変わっているということもあります。できるだけ正確に書いておくつもりではあるのですが、このエッセイ全般にわたり、現在の状況を書いたものではないことをご理解いただきたく思います。

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