教師のその言葉かけ、大丈夫?///第15回 「自信をもちなさい!」

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日本標準

子どもへの指導は、言葉によって行われます。先生の言葉かけ一つで子どもが変わっていきます。その言葉も効果的なものとそうでないものがあります。

この連載では、先生のちょっと気になる言葉のいくつかについて、解説していきます。ただし、NGワードとして出てくる言葉は「使ってはいけない」ということではありません。

局面に応じては有効な場合もありますし、緊急時などは、言葉を選んでいる余裕はありません。

ぜひ、先生の使っている言葉を意図的・意識的に用いて子どもを育ててほしいと願っています。

1.「自信をもちなさい!」

2学期は学校行事も多い時期。学習発表会や音楽会など多くの人の前に立つ場があります。また、教室でも朝の会でのスピーチや調べたことを発表するなどの活動もあります。そんな時、緊張して声が小さくなったり動きが硬くなったりした様子を見てこの一言。

「自信をもちなさい!」「自信をもって!」

 

2.問題の所在

「自信をもちなさい!」「自信をもって!」という言葉かけは、教師にとっては励ましや叱咤激励のつもりでしょうが、子どもにとってはそう受け止めていない場合があります。むしろ自信をもてなくさせてしまう場合すらあります。

 

  1. もっと緊張させてしまう
  2. 叱られていると思わせてしまう
  3. 本来できたことさえもできなくなってしまう

 

3.こんな指導をしてみましょう

01.もっと緊張させてしまう

先生が学習発表会の本番前に大声で「自信をもっていきましょう!」などと声をかける場合、クラスのみんながすでに自信をもっていて、チームワークが高まっている場合は効果的です。一方で、直前に失敗していたり、自分の実力を出し切れなかったりしていた場合は、子どもたちを委縮させてしまい、「これ以上失敗できない!」と、さらなる緊張を生みだしてしまいます。こんな時は、「大丈夫、大丈夫」「笑顔を作ってみよう!」「深呼吸して!」「ぐにゃぐにゃっと力を抜いてみよう。」と体の力をゆるめてあげます。リラックスすると自然と自分の力が発揮しやすくなります。

 

02.叱られていると思わせてしまう

個別に「自信をもって!」と言葉かけをする場合、自信のない子どもにとって、先生の言葉は「励まされている」というよりも「叱られている」と思ってしまうこともあります。子どもとの人間関係によって受け止め方が違うので気をつけましょう。叱られていると思わせないためにも、直すべきところはどこなのか「発表する時は声を教室の隅にいる友だちに届けるつもりで話してごらん。」「無理にでもいいから笑顔を作って歌うと遠くから見ているお家の人の印象がよくなるよ。」などと具体的に指導してあげましょう。

 

03.本来できたことさえもできなくなってしまう

子どもは「自信をもって!」と言われても、「どうしたらいいんだろう?」と自信をもつ方法が分からなくなり困ってしまいます。学習発表会や音楽会などは、本番では練習した時以上のことはできません。むしろ練習でできたことを同じように発揮させるような言葉かけをします。「これまで3週間も練習してきたね。その成果をしっかり出そう!」「今までこれだけ練習してきたよね。大丈夫!楽しんでおいで!」「自分のできる力を全力で出しきってごらん。」

私は学習発表会や音楽会の練習の時に「練習は本番のように。本番は練習のように。」という言葉を繰り返し言っています。いざ本番、という時には「今日は本番。これまでがんばってきた練習のつもりでがんばっておいで!」と声をかけています。

4.目指す子どもの姿

子どもが自信をもって堂々と人前で話したり、学習に取り組んだりすることが理想の姿です。そもそも自信は、経験を積み重ねることによって身についていきます。最初はだれしも自信がない状態です。ですから、「自信をもってがんばろう!」という言葉は教師が子どもに発するよりも、子どもが自分自身で言い聞かせる姿が望ましいです。自分の不十分な姿を自ら鼓舞する姿は、学習を高みに向けて自己調整している姿と言えるでしょう。

 

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